龍谷大学 里山学・地域共生学オープン・リサーチ・センター 里山ORCとは
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研究班1:生物多様性・環境計測調査研究

 本研究班は、生物多様性に焦点をあてて調査研究を行う。 各種気象要素および地域生態系のエネギー循環の調査研究も重要な課題となる。 瀬田丘陵の保全研究グループは、既に山林内外の定点的温度測定の記録をとり、熱エネルギーの計算を実験的に試みてきた。 また、植物相の調査に関しては一定程度の成果をあげており、植物約250種、菌類約120種を確認している。 本研究班においては、熱エネルギー計算を中心に環境計測・気象観測の精度を高めるとともに、植物相のみならず、昆虫・動物の生態についても調査する。 さらに水辺環境を創生し,かつての里山利用の形態を復元し,生物相の復元過程を追跡調査する。 また、本研究班は、保全生態学の立場から、伝統的な里山管理技術の調査研究に関して指導性を発揮するとともに、木質バイオマス利用の実験的研究をも行う。


 里山の一つの本質は、多様性である。 地域ごと、風土ごとの多様性も重要であり、研究班1は、琵琶湖南部に位置する瀬田丘陵を中心に生物多様性に関わる生物相を調査研究し、里山保全の手法を開発するために必要となる里山の基礎的な自然環境を調査し、種々のデータを収集する。 また、類似の調査研究を、可能な限り、滋賀県下琵琶湖周辺に広がる里山地帯においても展開し、比較検討を行う。 とりわけ、琵琶湖北部(湖北地域)の余呉湖周辺、マキノ町付近、湖東のカブト山周辺、湖西の仰木の里周辺を、それぞれ比較対照地域として調査していく。さらに瀬田丘陵に関しては、温度をはじめとする気象計測もその重要な要素になる。里山を結果として維持させてきた伝統的な技術の本質を探究し、それを現代にどのように生かしうるのかの基礎を調査研究する。 こうした調査研究にあたっては、龍谷大学瀬田学舎隣接地のコナラ樹林帯に観測タワーを建設し、各種気象要素の定点観測と生物季節学的な調査を行う。 また、地下水吸上げシステムを設置して、水辺環境を創生し、各種生物の定着状況を継続観測することによって、潜在的な生物多様性を調査研究する。 隣接地林内を、かつての里山林に近い形でゾーニングを行い、伐採等の保育管理を行うゾーンと、人手を加えずに保存するゾーンとに分け、それぞれの環境と生物相を継続観測し、里山保全のための基礎的情報を得る。 保全生態学の手法を活かしつつ、「守る」自然保護から「創る」自然保護への転換を実験的に実施する。

 九州大学および金沢大学との連携により、里山的自然とそこでの生物多様性に関して、地域的特性を視野に入れた比較調査を実施する。 さらに、関東地方、中国地方にも比較の眼を向け、アジア、ヨーロッパへも調査員を派遣し、里山的自然・二次林文化の可能な普遍性についても研究する。

 以上のことを標語的にまとめると、「里山景観変遷と地域比較」、「里山の生物多様性と維持機構」、「潜在的生物多様性」、「人為改変後の変遷」、「環境計測(気象・熱エネルギー)」といったことについての探究を、「里山の生物多様性維持に必要な攪乱」のあり方の追求に向けて総合することが、研究班1の研究内容である。

 なお、研究班1には、京都大学名誉教授である相良直彦氏および龍谷大学非常勤講師の須川恒氏に研究協力者として参加してもらう。 相良氏は、「里山地域生態系における真菌の生態学研究」を研究課題として、「日本における菌類生態と里山との関係の解明」に寄与してもらえるし、須川氏は、「里山を中心とした鳥類の生態研究」を課題として、「里山とその周辺域における鳥類生息地の生態解明」に寄与してもらう。 また、京都大学名誉教授であり、龍谷大学国際文化学部元教授の阪本寧男氏にも研究協力者として参加してもらう。 イネ科雑穀の起源・伝播の研究分野でも著名な阪本氏は、「里山に関する民族生物学研究」を研究課題として、「自然誌・民族生物学からの里山の意味の解明」に成果をあげていただくことが大いに期待できるし、研究班1と研究班2とを有機的に連携する重要な役割を果たしてもらえるものと期待している。

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研究班2:社会人文科学・地域共生学調査研究

 一般に環境についての研究は、従来までの学問の専門分化を改める必要に迫られる。 本研究班も旧来の社会科学・人文科学の区別を可能な限り統合することを意図する。 そしてその意図は、ここでは、地域共生の探求という共通の目的によって支えられている。 社会人文科学・地域共生学と命名するのは、こうした理由による。

 瀬田丘陵は江戸時代、膳所藩の所領であったが、当時の入会慣行についてはまったく判明していないし、明治以後の土地所有の移動についても、十分判然としない部分を含んでいる。 瀬田丘陵のみならず、滋賀県下の里山地帯での入会権の歴史と、農業経営との関係について法制史学的に調査研究するとともに、近世史・地域史の立場から歴史学的に調査研究する。 また、戦後日本の農業政策・森林政策および農業経済・森林経営の歴史的研究を踏まえて、とくに近畿圏と滋賀県に焦点をあて、この面での社会科学的調査と研究を行う。 さらに、龍谷大学文学部史学教室では、瀬田丘陵において縄文式土器の焼成実験を実施してきた。こうした実験考古学的な研究も視野にいれる。 また、近世史および環境社会学の立場から、里山の伝統的な利用および現代における新たな里山活用の可能性について追究する。 例えばエコツーリズムは、諸外国では経済効率の観点からも環境保護の有力な手法として評価されているケースが多々あり、里山モデルへの適用可能性を調査研究する。 さらに、「文化としての自然」の持続性を可能にしてきた背景には、伝統的な宗教儀礼を中心とした種々の習俗・慣習があるが、そうした習俗・慣習の調査研究を行う。また、自然の概念、環境の概念をめぐって、仏教学、哲学の視点から研究し、「里山」概念の彫琢をするとともに、環境倫理の「里山モデル」の構築を、欧米の環境倫理との比較を通して追求する。


 里山は、高度経済成長期以後、急激に荒廃してきた。 その荒廃の速度は滋賀県下においては比較的遅く、他府県に比べるとなお「生きた里山」を多く残存させている地域である。 日本の戦後の国土政策および農業経済・森林経営に関する政策と経済の歴史的推移を調査研究する視座をもって、とくに滋賀県についての農業経済学的・森林経営学的な調査研究を行う。 また、里山は伝統的には入会権によって確保されたいわゆるコモンズとしての性格を有していた。 日本における入会の慣行がどのような実態をもっていたのかということを中心視座として、滋賀県下全域および琵琶湖南部地域の社会学的・法制史学的・歴史学的調査研究を行う。 歴史学的調査研究には、遺跡の調査および文書の調査研究も重要な要素となる。 さらに、入会慣行以外にも、里山を維持してきた伝統的な人間の行動様式があったはずであり、現在なお残っているものを含めて、環境社会学的な調査研究を行う。 また、単に過去の調査研究だけではなくて、現代における里山農村環境をめぐる共同体の人間行動を調査研究し、現代にマッチした新たな里山活用の可能性を探求する。伝統的な里山環境の持続的活用の背景には、伝統的な宗教的儀礼をはじめとする種々の習俗・慣習があるが、そうした習俗・慣習の調査研究を行う。 さらに、国、滋賀県、大津市の近年の里山に対する施策の状況を調査し、また、環境NPOに焦点を当て、先進的かつユニークな活動を行っている団体を調査し、行政とNPO、地域住民の連携による里山再生の手法や仕組みについて調査研究する。 制度や共同性を支えるソーシャル・キャピタル(社会関係資本)の視点が重大な意味をもつ。

 また、「里山」概念の歴史的展開を調査研究するとともに、自然の概念・環境の概念をめぐって、仏教学、哲学の視点から研究し、「里山」概念の彫琢に努める。 さらに、欧米での環境倫理の展開を追跡し、それとの比較において環境倫理の「里山モデル」を構築する方向で研究する。 また、地域における協働・共生の理念を、「公共性」の概念とともに探究する。

 以上を標語的にまとめると、「里山利用の制度と文化」、里山に関わった「遺跡と文書」、「県市町村史」、「祭礼・しきたり」といった習俗・慣習、「入会・社会規制」といったものの研究を、「里山維持の経済」(広義の経済生活・社会生活)の新しい形に結びつけ、現代における「自然観と里山概念」に結びつける。

 さらに、「里山ネットワーク」(市民・NPO・行政などとのネットワーク)の構築を目指す。

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